こんにちは!
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
依然サッカー界も厳しい状況ですが、ストレスを溜め込まずに自分の気がつくちょっとした身の回りのことに気配りと感謝をしながら過ごそうと思っております。
さて、今回はまたサッカー本ではないのですが、スポーツにもビジネスにも通ずる戦略本として知られる「孫子」をご紹介したいと思います!
ちょうど一年くらい前に読んだ本で、マンガ版もでている守屋淳さん著の『最高の戦略教科書 孫子(日本経済新聞出版社)』になります。
孫子とは
はじめに「孫子」について簡単に説明したいと思います。
孫子は今から約2500年前に中国大陸における春秋戦国時代にいた軍師「孫武」よって書かれたとされている(この説が現在は有力)兵法書になります。
13篇からなっており、戦争へ臨む上での心構えから戦争の準備、攻守の態勢、自軍と敵軍、地形、火攻めの戦術などで構成されています。
そしてこの孫子の作者とされている孫武は、軍事思想家として正史『史記』の中にその存在とエピソードが登場します。
こんな大昔に書かれた戦についての本ですが、現代の今もなおたくさんの人に読み続けられている“バイブル”となっています。そして孫子に大きな影響を受けている人物の中には歴史上の偉人たちがたくさんいます。
本の裏帯にもあるように、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ、ソフトバンク社長の孫正義、サッカー監督のスコラーリなどがその愛読者に名を連ねています。
それだけこの兵法書は、スポーツでもビジネスでも勝負の世界に身を置いている人々すべてに通じる内容の戦略本であると思います。
いかに負けないか
ここから少し内容にふれたいのですが、僕が一番この本で「え、そうなんだ。」と思ったことが孫子の前提の部分です。
孫子の中に書かれている戦とは、一発勝負であり、やり直しの効かない状況であるという前提の立場をとっています。
著者の方はこの本の中で「戦争における孫子の前提条件は、二十人といったレスラーを一度にリングに立たせて最後の勝ち残りを争うバトルロイヤルに近い。」と表現されています。
この本が書かれたのはまさに生きるか死ぬかの乱世の時代です。失敗とは自軍が殲滅されることを意味し、もう一度リセットしてまたやり直すことなどできない世の中です。また、一つの戦いが終わりまた次の戦いに臨む時には、その前と同じ状態ではスタートできません。九死に一生を得て戦いに勝利しても、次の戦いで負けてしまうのでは、やはり意味がないのです。戦いはまさにバトルロワイヤルで、勝ち残ることを目指す戦いということになります。
この孫子の前提は僕の勝手に思っていたものとは違う内容でした。
本当勝手になんですが、孫子には戦いの必勝法のようなものが書かれていて、その内容としてはどちらかというと抽象的で、感情的なものなのかなと想像していました。
しかしながら、先にも書いた通り、その前提は如何に勝つかではなく、如何に負けないかという立場をとっています。それはいかにして戦いを避けるのかということであり、逆に言うと勝算がなければ戦わないということです。
非常に合理的であり、情緒的ではない印象を受けたのが勝手にすごく衝撃を受けました!(これは僕のただの感想です笑)
彼を知り、己を知れば、百戦して殆うからず
ー彼を知り、己を知るならば、絶対に敗れる気づかいはない
彼というのは戦う目の前の敵だけのことではなく、目先の敵を含む周辺のライバルすべてのことではないかと、この部分の解釈の可能性を著者の守屋さんは指摘しています。
この辺もすごく合理的であって、当たり前いってしまえばそうなのですが、戦いは自軍と相手の比較からはじまります。
しかし、勝算が見込めないような戦いをずっと避け続けることはできません。どこかで必ず、戦いをしなければいけない状況に陥ります。
そこで、いざ戦うことになった時にはどうするのか。という部分が始まっていく本の構成となっています。
少し長い本ですが、すごく面白く、僕にしてはスラスラと読み進めていけたので、是非読んでみてください!
勝てる組織とは
この本の第十章に孫子に書かれている勝てる組織をいかに作り上げていくかとそれを率いる将軍の条件について紹介されています。
まず組織を構成する部下について、孫子では端的に言うと愛情や温情による心服、規律による統制の二本立てで部下をまとめなさいとされています。
スポーツでもビジネスでも人をまとめることに関して悩みを持っている人は非常に多いと著者も書かれていましたが、かく言う僕自身もその内の一人であります。
どうすれば(漠然とですが)結果を出せる(勝てる)そしてそれぞれの自主性もある組織(チーム)となっていけるのか。育成年代の指導者のテーマとしてよく出るのが、「個を育てること」と「勝たせること」の両立をどう目指すのかということ。
そこには色々な前提があるので説明不足な表現にはなってしまうのですが、要は言われたことをそのままやって勝つようなチームを一生懸命つくったとしても、その後の選手たちに主体性や問題解決能力といった自ら進んでいく力はついているのか?問題です。
孫子ではただ単に厳しくその軍の兵士たちを統制しろというスタンスはとっておらず、兵士に信頼されるように心服させた上で、厳しくする部分は強烈に統制を行うとしています。
『孫子』の組織づくりは三層に分かれていて、最下層の土台には「愛情や温情による心服」がくる。その上に「規律による統制」の層が乗り、一番上には「強い危機感」が鎮座して全体に光沢を与えている。
先ほどふれた部下をまとめる二本立ての上に、その組織をより高いレベルでまとめるためには強い危機感がいると書かれています。
上から厳しく統制をされており、組織のトップを心底信頼している部下たち。これだけでは有機的なチームワークは生まれにくく、部下一人ひとりが自主的に動くチームワークを作るためには、強い危機感の共有が必要になるというのが『孫子』の考え方になります。
戦うことが兵士自らの問題になってこそはじめて「自主性」は生まれてくるという考え方があり、そこは僕も感じたことのある「自分ごと化(当事者意識)」に通ずる部分があるなと感じました。
この記事で自分ごと化についてふれています!
人間とはどんな生き物かを知っている
ここまででもすごく深い内容であることが分かると思います。
そして孫子が書かれたのは約2500年前というから、昔の人はすごいなと改めて思います。
そして今もなお読み続けられているという部分で、本質的にみると僕ら人間そのものはそこまで変化してはいないのかなとも思いました。
孫武はよく人間という生き物を理解していた人であり、この後に登場する組織をまとめるリーダーたちも人間という生き物をきちんと理解していたのではないかと感じます。
すごく合理的であるが故に、少し歯がゆいというか、あざといというか、もどかしいというか、日本人の正々堂々を好むメンタルの部分を揺さぶられる内容であることも間違い無いのかなとも思います。
綺麗事だけではやっていけない。そんな甘い世界ではない。
そんな声も聞こえてくるような兵法書でした。
ここに紹介しきれていない話がまだまだあり、現代に孫子をどう生かしていくのかという視点を忘れていない、ただの歴史解説書ではないので、ぜひ読んでみてほしいと思います!
人によってですが、色んな理由で「もっと早く読んでおけば良かった」と思ってもらえるのではないかと思う一冊です!マンガ版も出版されていますのでぜひ!
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